(男抱いてみてぇな……)
去年の秋、平日休みを利用して行った海辺の温泉に浸かりながら僕はそう思いました。誰もいない露天風呂、眼前に広がる広大な海を眺めている時に何故男性との性行欲求が生じてしまったのかは未だに謎なんですが、なっちまったもんは仕方ない。僕は急いで風呂から出ると【男の娘 風俗】とGoogle検索をし、気付けばそこから80キロ離れた地に立っていました。この書き出しもデジャビュだな……
パーキングに車を停めその時を待ちます。今回指名した嬢をそうですね…Hちゃんとしましょうか、まぁHなのは僕の方ですけどね。H拗らせて守備範囲外の筈の同性に行ってしまうのはHと言うより錯乱に近い気もしますがそこはまぁ良しとしましょう。こういうのは突然なんですよ。衝突事故みたいなもんなんで黙って受け入れるのが男ってもんです。(本当にそうか?)
と、そういえばHちゃんを選んだ経緯がまだでしたね。Google検索で出てきた女装デリヘルサイトの出勤情報を見て1番可愛い子を選びました。以上です。
いやだって本当に可愛かったから……一見して普通に可愛い女の子だったし、こんな可愛い子の股間に男根がぶら下がってると思うとギャップに目眩がします。こんなエロ漫画でしか味わった事がない感情を現実世界で味わえるとは思いませんでした。しかもそんな子を?俺が?抱く事が出来ると。興奮し過ぎて頭がどうにかなりそうですね。まぁ温泉浸かってた時点で既に壊れてたと思いますけどね。じゃないとこんな行動起こさないだろ。
そんなHちゃんは既に予約が入ってました。空くまで1時間半待ちと言われたので黙ってその時を待ちます。完全に気持ちはHちゃんです。
現在時刻は19時半。今回はデリヘルなのでホテルも押さえないといけません。なので21時の15分前にはホテル入って連絡しないとな……なんて事を考えてたら、『Hちゃん予定より早く終わりました!』って連絡が20時20分くらいに来て焦りました。いや前倒し40分ははえーよ。こちとら緊張で震えながら時計を凝視し続ける様な状態だったもんだから心臓が弾け飛ぶかと思ったよ。覚悟の時間をもう少しくれ。
気を落ち着ける為にラマーズ法で呼吸を繰り返しながら近くのホテルに向かいます。部屋の鍵を受け取り、お店に番号を伝え、ベッドに腰掛け再びラマーズ法。この緊張感と呼吸の感じ、マラソン大会の走り出し直前に近いものがあるかもしれない。やってやるよ…俺は…やるぞ…!
しばらく待っているとガチャっという音と共にドアが開きました。そこに立っていたのは……
金髪ロングのウィッグ。
若干の男っぽさはあるものの綺麗な顔立ち。
ホットパンツ。
完全に当たりだ。
僕はそう思いました。今まで幾度となくパネルマジックの憂き目に遭い、写真に対してはもはや諦念の感情すら抱いていた僕なので、最悪バンドマンみたいなただのロン毛の男の人が来る可能性も視野に入れていたんですが完全に杞憂だったようです。そりゃ写真の方が可愛いとは思いましたが、全然許容範囲内ですね。初めてでこれは嬉しい…
「こんばんはー!」と言う声は勿論男の人のものだったので、ああ、これから本当に男の人とやるんだと期待と緊張で再び心臓が高まります。不整脈持ちだったらこのまま終わってたかもしれないですね。そんな死に方嫌すぎるだろ。
挨拶を交わした後はベッドに座る僕の横に腰掛けたので、そのまま普通に会話を楽しみます。
Q:どんな経緯でこの仕事を?
A:友達に言われてですね!「お前なら絶対人気出るから!」って言われて、僕もちょっと興味あったんでやってみようかなと。
Q:じゃあ男性相手でも大丈夫だった感じ?
A:そうですね。元々男の人が好きだったので、こういう仕事も面白いかなって。
Q:なるほど…正直ぼく同性は守備範囲外で、申し訳ないんですが今回も好奇心みたいなもんなんですけど、そういう方もいらっしゃいます?
A:いますいます!女の子とやっても中々イけなくて〜なんて方が興味で遊んでくれたりしますね!
Q:やっぱいるんだ…ちなみに皆さん満足してるんです?
A:この前の人は2回イッてましたね笑
Q:それは凄い笑 じゃあそろそろシャワーの方を……あ、すいませんシャワー浴びる前にホットパンツ越しに触ってみてもいいですか…?
A:全然いいですよっ!はいっ!
フニッ
チンチンがある……
ビックリした…いやまぁ当たり前なんだけどこんなふうに人のイチモツを掴む機会なんてないからね…しかもそれがこれから寝る人相手なら尚更の事だから…思わず一瞬宇宙ネコになってしまったよ…こいつは参った…
お互いに全裸になり風呂場へ向かいます。全裸と言っても流石にウィッグは外さないHちゃんです。そりゃそうだ。それまでとったら女装じゃなくてただの華奢な男の人になっちまうもんな…コンセプトガン無視になってしまう。
普通の風俗と同じで体を洗ってもらいます。その間僕の視線はどこに向いているか。ちんこだよ。そこ見ないで他にどこを見るってんだい。シューティングゲームの自動マーキングよろしく僕の視線はそこに釘付けです。だって…ねぇ?この状況で…ねぇ?そりゃ見るでしょ。
普段はチンチンが1本に凹が1つな筈のこの状況に、チンチンが2本あると言う異常性。そのかわり凹はありません。あるのは後ろの凹2つ。どっちが組み伏せ凸を突っ込み屈服させるか、文字通りこれは男と男の漢を賭けた勝負と言っても過言ではないでしょう。絶対に負けられねぇ勝負ってのが男にあるんです。望むところだぜっ!
まぁ今回の子はそもそも自らが挿れるのはNGだったので、自動的に僕が突っ込む側になりましたけどね。対あり。
後なんかめっちゃ高まっちゃって、意味分からんくらい勃起しました。とりあえずその情報を事前に伝えておきます。
体を清め終わり、2人でベッドに腰掛けます。そしてHちゃんに仰向けになってもらい。まぁ色々とあれこれをし始める訳ですよ。
そしていきなりクライマックスです。なんでってそりゃね……男である筈の俺の眼前に怒張した男根がそびえてるとなっちゃクライマックスと言わずになんて言うんだいって話ですよ。人様の勃起チンポをこの至近距離で見るなんて後にも先にもこれが初めてだいってな…いや当たり前だろ。
これが女性から見える世界なんだなぁなんて思いながら意を決し、僕は、その肉棒を
咥えました……
はい、やってしまいました。もう言い逃れ出来ませんね。その時まではただの風俗好きの兄ちゃんだった僕でしたが、この瞬間から大型獣脚類フェラチオサウルスと相なってしまった訳です。こんな筈じゃなかったんですがね。運命の歯車はいつ狂ったのか。前倒しの連絡が来た時か、温泉に浸かっている時か、それとももっと昔から狂い始めていたのか。その真相は神のみぞ知ると言ったところですが、揺るがない真実が1つだけあります。僕はチンチンを咥えました。
まぁ冗談は置いといて感想ですが(それもそれでどうなんだ)。なんだろ…なんか普通に肉棒って感じでしたね…似たような口当たりの物って多分俺の人生じゃ無かったとと思うんですが、そうとしか形容できないかなぁ…いやまぁ実際肉棒なんで当たり前っちゃ当たり前なんですけどね。普通に普段自分のを触ってる時の感触を口で感じたってくらいの認識ですかね。
そんな僕の初フェラチオも終わり、今度は逆にしてもらったり挿れたりした訳ですが、これじゃイけないのは今回も同じだったので、やっぱり最後は手コキになりました。そこは普段と変わりませんね。
ただ今回決定的に違うのはチンチンがもう1本あるという事です。言いたい事分かりますかね?
ちんちんが2本あって、どちらも手コキをする事が出来るって事ですよ?ならやる事は1つでしょ。
ガンマン勝負です。
ここに来て男の勝負に持ち込めるとは思わなかったので俄然燃え上がります。お互い近くに寄ってお互いのものを扱き合い、早くイッた方が負け…自慢のピストルがどれだけタフかを競い合う正に男同士の戦いです。しかも向こうが射精した場合、オプションで4000円取られるというハンディキャップ付きです。ただでさえ大金を払ってる上に勝ちに固執すると更に金を取られるという状況下でしたが覚悟は決まってます。これでも多少は強い男を自称してんだ。こんな華奢な男に……難なくイかされて敗北顔を晒す訳にはいかねぇんだよ!!!
負けました。
割と長期戦でしたが普通に負けましたね。いやダメだ。この一晩でフェラチオサウルスになった上に雑魚チンポにまでなるなんて思いもしませんでした。いやもういいや。こいつ強いわ。強い。俺の負け。対あり。フェラチオ雑魚チンポサウルスとして僕は余生を過ごします。これが敗者の末路です。
いやぁでも、冷静に考えると絵面が凄まじかったと思いますね。
片や女装が似合う華奢な男性に対し、もう片方は程よいガタイの良さと坊主に髭というゲイポルノ男優のお手本みたいな風貌だったので世界観の差が凄い。
男の娘漫画のヒロインと薔薇族の主人公という需要が迷子の歪んだクロスオーバーとなりましたが、まぁこれも経験という事でいい思い出になりました。Hちゃん、お相手ありがとうございます。いい思いさせてもらいました…
と言うわけで、今回の女装風俗初体験はこれで終わりです。どうだったかな?みんなも行ってみたくなっちゃったかな?正直に言えっ!
実は正直言って僕はもういいかな…って気持ちがあります。いや、て言うのもですね…
賢者タイムが凄まじいんですよ……マジで……
これは完全に僕だけが悪い話なんですけど、やっぱり元々守備範囲外だった同性ってのは思ったよりカウンターが強かったみたいで…なんか性欲が0になるどころか突き破って鬱にまでなっちゃって…その日の夜は中々眠れませんでしたね…男とヤっちまったのか…みたいなね…
もう1回言いますけどこれはあくまで異性愛者の僕が勝手やって勝手に落ち込んだだけの話なのでそこは悪しからず…決して同性愛を否定する様な話では無いのでその辺は理解と勘弁をしてもらえると助かります。
いやでもこういった経験を出来たのは本当によかったですね。その時は凹んでも、やっぱりあんまり経験できない事を経験できたってのは素直に嬉しいです。行為中はめちゃくちゃ興奮したってのもまた事実だしな。あの瞬間は本当に楽しかった……
後はあれですね。皆さんお酒って飲みます?まぁこれ見てる人なんかは大人が大半でしょうしきっと飲んだことあるでしょう。
酒ってさ、めっちゃ飲んで地獄みたいな二日酔いになった時「二度と飲まねぇ」ってなりますよね。これが酒飲みのあるあるネタとして確立してる以上多くの人がそれを体験してると思います。
でもまた飲んじゃうんですよね。人間て馬鹿だから。その時は「もういいや…」って思ってても、時間が経って苦い思い出が薄れてくるとまた同じことを繰り返しちゃう。アホですねぇ。
でもそういうものですよね。人間て。時間が経つと大抵忘れて同じ事をする。そんなもんです。そんなもん。
なんでそんな話をしたかって言うと…ねぇ?
だから、ねぇ。つまり、ねぇ。
まぁ、そういう事ですよね。
緊急事態宣言、早く終わんないかなぁ。