篠崎の独り言

ハゲ頭のヒゲ面が頭に浮かんだ事を適当に書き殴るブログ。責任感の強い男なので、飽きたらやめます。twitter→@cmjtm4hc8

風俗行ったらあるお方に激似の人が来た時の話

多分、寒い時期だったと思う。地元の片隅、当時まだ営業していた閑静なラブホテル。その一室のソファに腰掛け、僕はゆらゆらと煙草をくゆらせていた。

 地元はお世辞にも栄えているとは言えない。風俗どころか、夜間に営業している店を探す方が難しい。なので、女遊びするならもっぱら隣町。キチンとした風俗に行きたいなら、車を1時間程走らせるのが毎度の恒例であった。

 ただ、その日は夜も遅く、店舗型には間に合わない(大体0時で閉まってしまう)。そもそも、そんな時間から遠出をするのも面倒くさいという理由で、隣町にあるヘルスに地元までのデリバリーを頼んだのが、この日の出来事の一歩目である。

 ヘルスに電話し、空いてる娘を聞くと今すぐに準備できるのは2人だと告げられた。

 田舎町のヘルスなので1日の出勤している娘は少ない。おまけに、その日は友人と2人だった。そんな中、ちょうど2人空いているのは運が良いとお互い喜びながら、告げられた名前をHPで探した。

 案の定、顔にモザイクがかかっている。モザイクというより曇りガラスのそれに近い。正直、全くと言っていい程顔は見えない。

 だったら悩むのも時間の無駄だと、たまたま先に目に付いた名前を僕は店側に伝えた。

 名前は「もも」ちゃん。可愛らしい名だ。さぞや愛らしい娘が来るに違いない。

  そう淡い期待を寄せながら、話は冒頭のソファに戻る。根元まで吸った煙草を灰皿に押し付け、何をするでもなくボケッとベッドの方を眺めていた。

 しばらくその状態で待っていると、『コンコン』と扉をノックする音が部屋に響いた。お待ちにかねかねた愛しのももちゃんがようやくお出ましだと、僕はウキウキで扉に近付く。

 そして「今開けまーす」と声に出し、取っ手を掴んで扉を開けた。そこに立っていたのは…

 

「こんばんは(小声)」

 

 

 

 ……?

 

 …えっ、皇族の方?

 

 いや、なんか見た事ある顔ですよ貴方。ん?皇族?えっ、なんかあのお方に似てません?

 

 …扉の前で待っていた娘は。皇族のあるお方にそっくりだった。

 

 ここで、一旦話を逸らすが。僕は今年で26になる。

 後半に差し掛かったとはいえ、まだまだ20代。若い僕には何も怖いものなんて無いが(神田川)、強いて1つだけあげるのなら不敬罪だ。

 そう、不敬罪

 いや、書けねーよ。流石に名前は書けねーって。こんな薄汚れた便所の壁紙みたいな日記に、「◯◯様にそっくりな風俗嬢来ました〜w」なんて◯◯を埋めた状態では書けませんて。

 いや分かってますよ?昔ならいざ知らず、現代日本において不敬罪が適応する事なんて無いと(名誉毀損はあるらしいですが)、ただまぁそういう事じゃ無いんですよね。法律云々というよりも、僕の心の日本人がそれだけはやめとけって囁いてくるんですよ…それお前…不敬じゃない?処す?処す?みたいなね。処さねーよやめてくれ。

 というわけで名前は書きません。以降は仮名で書きます。ただ一つだけヒントを出すとしたら人工知能です。これに上手いこと『子』を付ければおのずと答えは出てくる筈です。いや、出ない方がいいのかもしれんけど…

 以上です。では話を戻しましょう。

 

 

 部屋の前に佇む人子(仮名)。その顔を見て一瞬フリーズしかけたが、すぐに我に返り人子を部屋に招いた。冷えた外気が入ったせいで、部屋の温度が少し下がった。

 人子をソファに座らせ、僕も隣に座る。風俗だからとていきなり性行為が始まるわけではない。あくまでも接客業。最初はこうしてトークを楽しむのもまた醍醐味である。

俺「いやぁ、今日もめちゃ寒いですね」

 

人「はい」

 

…………

 

俺「今日はどうです?忙しいですか?」

 

人「いいえ」

 

…………

 

俺「…趣味とかあります?(お見合い)」

 

人「特には」

 

…………

 

 話が全く続かない。こちらの質問に対して、話題を広げるもなく一言で切り捨てる様はまるで著名な侍のようであった。現代の武士。ここに現る。

 先程も言った通り、これも接客業だ。今まで相手してくれた娘たちも、皆最初は饒舌に喋ってくれた。淡々と話す娘もいたが、それでも話題を振れば答えてくれたし、そこから会話を広げもしてくれた。

 しかし、この娘はそうじゃない。こちらから話を振れば切れ味抜群の一言で切って捨て。向こうからのアクションを待っていると何もなしと、全く次のステージに進める気がしない。おかしいな。俺がしたいのはエッチな事であって決して謎解きゲームではない筈なんだけど。

 しばらく無言の膠着状態が流れる。だが時間は有限、こんな毒にも薬にも、いや、払った金額を考えれば毒にしかならない時間を延々と過ごしていても何も得はない。ていうか損。大損。諭吉2人の涙が溢れるのも必須である。いや泣くのは多分俺だけど。

 このままでは仕方ないと、「シャワー浴びましょうか」と声をかける。普段は向こうからかけてくれる言葉だが、まさかこうして自分から言い出す場面があるとは思いもよらなかった。

 僕の言葉を受け、彼女も「はい」と頷く。そこからは特に滞りなく、2人で服を脱ぎ全裸になった。

 とすれば後はシャワー室に向かうだけ、ここまでくれば後は色々としてくれるだろうと思っていたのだが、甘かった。

 

 なにもしない。

 

 この子。

 

 裸になっても、何にもしない。

 

 流石にビックリしてしまった。既に衣服は全て脱ぎ終わり、正真正銘生まれたままの姿になってからも、一向にアクションを起こそうとしなかったのだ。

 恥ずかしがるわけでも、緊張しているわけでもない。『無』。その表情は、そうとしか形容できない程に感情が死んでいた。

  ここまで来ると腹が立つどうのよりも純粋に怖くなってしまう。

 全裸に無表情で一点を見つめ続けるその佇まいは、一周回ってそういう流派なんじゃないかと勘ぐってしまう。最初の言葉の切れ味も相まって、ますますその疑惑が確信へと近付いてしまった。ここは巌流島か?

 またしても毒にしかならない時間が流れかけたが、流石にもう時間が勿体無い。この子には期待しても無駄だと僕から積極的にアクションを起こす事にした。まずは「こちらです」とシャワー室まで案内する。

 その後、後ろで人子が見守る(?)中、僕はシャワーの温度を確かめた。いい感じに調節し、「これ熱くないですか?」と人子に確認する。(大丈夫ですと言ってくれた)

 そして彼女が全身にシャワーをしたのを確認してから、「ボディソープです」と彼女の手に液体石鹸を垂らした。

 この辺りで、正直どっちが客だか分からなくなったがもうそんな事はどうでも良かった。前述した通りあのお方にそっくりだし、きっと下々の者の生活なんてわからないんだ。それなら当然だよね。大丈夫、僕がなんとかしますよと謎の使命感もあった。ていうかそう思わないとやってられなかった。

 

無事(?)に体も清め、2人でシャワー室から出る。暖房が効いていたが、体に付着した水が気化すると共に体温を奪っていく。肌寒さを感じる前に急いで体を拭いた。確かタオルも僕が渡したと思う。

 

 そしてついにお待ちかね。ようやくプレイの瞬間まで漕ぎ着けた。長かった様で短い20分。ここからが本番である。

 あまり良い言い方ではないが、器量もう〜ん、対応は嘘でしょ…、ここまできたらテクニックに期待するしか無い。というか、これでテクまでなかったら、いよいよ僕は何に金を払ったんだとなってしまう。頼むから、そこだけは突き抜けていてくれと願いを込めながら、僕はベッドに仰向けになった。

 

 

 

 

 

 

 

 下手だった。

 

 なんかもう、凄い。拙いというか、全然気持ち良くない。フェラとかめっちゃ歯立てるし、感動的なまでに感じなかった。なにこれ。

 この辺からはもう全てを諦めていた。「あ、今日はなにもかもダメな日なんだ。まぁそんな日もあるよね。ドンマイ」と、自分を慰める言葉が頭の中をグルグルする。

 この時、僕がもっとも好きなローション手コキをお願いしていたのだが、正直何も感じていなかった。頭の中は(どうしてこんな事に)という疑問と自責の念、自身への慰めの言葉で埋め尽くされており、そんな拙い手コキ等を感じるスペースは頭のどこにも無かっいったたたたたた!痛っ!!痛い!なに!?

 

 ペニスに焼ける様な痛みが走り、慌てて彼女の方を見ると、もう殆どローションが乾いているにも関わらず手コキを続けていた。

 ローションて乾くとめっちゃ摩擦係数高くなるんですよね。そんな状態で敏感な所を擦り続けるもんだから僕の脳みそは大慌てですよ。ペニスが発火したかと思った。

 ていうかその摩擦係数だと擦る方も相当力入れたと思うが、何故やめなかったのかは未だに謎である。途中で気付いて本当に良かった。もう少し遅かったら根元から抜けていたかもしれない。考えただけで恐ろしい。

 「痛いのでローションを追加してくれ、多めでね」と彼女にお願いする。こんな牛丼屋で汁を多めに頼む時みたいな気持ちをまさかラブホテルでエッチの最中に味わうとは思いもしなかった。頭がどうにかなりそうだ。

 多めにローションを垂らし手コキを再開する人子。先程よりかは気持ちいいが、それでも50歩100歩。大した違いはない。

 このままでは恐らく、いや、確実にイけない。僕はそう考えると、目を瞑り、深く集中した。

『女性にあそこをしごかれている』。

 テクニックではなく、今自分が置かれたいる『状況』に興奮し達しようと考えたのだ。

 当然生半可な道ではなかったが、自分でも驚く程の集中力、そして、散っていった諭吉達の思いに背中を押され、ようやくその瞬間が訪れる。ようやくだ。ゴール…(Air)。その瞬間。

 

 

 

 ビシャッ

 

 っと顔に何かが飛んできた。

 

 手のひらでそれをぬぐい、目で見て確認する。

 

 

 我が子達だった。

 

 1億の、我が子達。

 

 今度は彼女の方に眼を向ける。僕のペニスを握ったまま。事切れた人形の様に一点を眺め続けていた。

 銃口をこちらに向け、感情も無く固まっている様子は、さながら殺しを終えた暗殺ロボットの様であった。

  

 僕は枕元にあったティッシュで顔を拭くと、「シャワー浴びましょっか」と素っ気なく言った。「はい」と彼女も付いてくる。ボディソープは、もう出さなかった。

 

 先にシャワー室を出て着替える。そしてソファに座り、タバコに火を着けた。

 しばらくして彼女も出てきたが、会話は全くなかった。僕が2本目のタバコを吸い終わったあたりで、迎えの電話が彼女にかかる。

 2人で一緒に部屋を出た。迎えの車が来ていたので、「ありがとうございました。気を付けて」と、彼女を見送った。

 

 その後、自分の車で待機してると、一緒に来た友人が部屋から出てきた。楽しそうに女の子と喋っていた友人は、女の子を見送るとニコニコしながら僕の車に乗り込んだ。

 

友「いやぁ最高だったよ!!そっちはどうだっt」

 

 

俺「うるせええええええええあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」

 

 

後に、周りから『お忍び皇族ファック』と呼ばれる様になる、冬の日の出来事であった。