篠崎の独り言

ハゲ頭のヒゲ面が頭に浮かんだ事を適当に書き殴るブログ。責任感の強い男なので、飽きたらやめます。twitter→@cmjtm4hc8

部活終わりの育ち盛り、17歳と家系ラーメン

 『家系ラーメン』というものを始めて食べたのは高校2年生の頃です。今や懐かしい改装前の西千葉武蔵家で、部活の仲間に誘われて行ったのがきっかけだったなと10年近く経った今でも覚えております。

 当時の武蔵家は今のよりも少し薄暗くて、良い言い方をすれば『貫禄のある』店でした。

 お手本のようなラーメン屋と言いましょうか、ラーメンを作るスペースをL字で囲うようにカウンター席があり、一心不乱に麺をすする肥えた社会人の後ろを通り、奥にある階段の上、テーブル席が5つ程ある2階席が我が柔道部の溜まり場でした。ポツンと一台置かれたアナログのテレビから、記憶もおぼろげですがバラエティが流れていた様な気がします。

 当時の僕はラーメンを、ポピュラーな『塩、味噌、醤油』の味付けでしか食べた事が無く、『横浜家系』『背脂たっぷり』といったラーメンは存在すら知りませんでした。

 新しいものに尻込みしてしまう性格なので、この日も未知のラーメンへの誘いに最初渋い顔をしたのを覚えております。当時はバイトも何もしてなかったので、使えるお金も少なかったですし。

 それでもしつこい誘いに負け、本来部活の顧問に渡すはずの部費を握りしめてラーメン屋に着いて行きました。ちなみにこの日をきっかけに僕はよく部費でラーメンを食べに行くようになりました。まぁ遅れてちゃんと払ってましたが、今考えるととんでもないですね。

 当時はまだ17歳でバリバリの育ち盛り、おまけに柔道部ときたもんなので、人と比べたら食べる方だったと思います。帰りにパンとビッグマックのセットを食べ、家では家でどんぶりによそった米とおかずをガツガツ食ったりしてましたね。今やったら成人病真っしぐらですよ。

 そんな高校生だったので、もちろんラーメンも大を頼みました。そして席に着いてからライスが無料で頼める事を知り、大盛りで頼んだ記憶があります。食い過ぎだろ。

 そして待望のラーメンとご対面。今まで見た事ないタイプのラーメンを興味深く観察した後、一口すすってみると

 

「えっ、めっちゃうまい

 

 なんかふっっつーーー…に美味かったです。めちゃくちゃ衝撃を受けた訳でも、テンションぶち上がった訳でも無く、でもめっちゃ美味いなぁというような感想になりました。

スープに浸した海苔で米を巻き、頬張る…美味い。

 ライス用の細切れたチャーシューを米に乗せて食ってみる…美味い。

 スープに米をぶち込んで食ってみる…美味い。

 こうやって思い出してみると米ばっか褒めてる様な気がしてきましたが、確かに最初は米が美味かった様な印象のが強いですね。それも家系スープの濃い味とチャーシューの力ですが。

 とにかく。米であろうが麺であろうが、この日僕は『横浜家系』というのに完全に魅せられてしまいました。その場では腹一杯食って「しばらくはいいかな」と思っていても、翌日には食べたくなってくる。まさに二郎スパイラルと同じ症状です。ちなみにこの時は二郎系も知りませんでした。未来に夢溢れ過ぎかよ。

 それからしばらくして。それまで米がメインで来ていたある日、なんの脈絡もなく突然ラーメンがクソ美味く感じました。ラーメン屋でこの感想になるのはシンプルに意味がわからないんですが、それまで僕の中でメインだった米を麺が押しのけトップに立ち、この日でようやく『家系ラーメン』というものを好きになれた様な気がします。それからもしょっちゅうここのラーメンを食べました。部費で。

 ここまで美味しい思い出たっぷりの武蔵家ですが、体育会系の高校生が『ライス食べ放題』という制度を悪用しないわけもなく、先輩が後輩に米を食わせまくる食ハラ(食べろハラスメント)が横暴してた苦い思い出もあります。後輩の口に米を詰め込む様子はフォアグラ用のガチョウの餌やりを彷彿とさせましたが、今となってはいい思い出です。店からしたらたまったもんじゃないけど、これも若さ故って事でここはひとつ…。

 そんなこんなで10年経った現在。今でも時折食べに行きます。大人になった今は西千葉への用事もなくなり、遊ぶところも多い千葉中央の武蔵家に通う様になりましたが。

 それでもこの前…て言っても1年くらい前ですが、久しぶりに西千葉の武蔵家に行きました。

一度火事やらなんやらがあったらしく、冒頭でも書いた様に改装された店内はすっかり小綺麗になってしまいましたが、味はあの日と変わらずのままでした。

 あの頃より食が細くなった僕はラーメン並とライス並を頼み、それでもギリギリの腹を撫でながら表に出ました。

 当時と変わらぬ景色、人並み、腹の重み。

 

 それでもこれだけは変わったけどねと、僕は店先の灰皿の前で、堂々とタバコを吸うのでした。

 

 終わり。